目を覚ますと、海を望む窓には、朝霧が流れていた。
左手に見えるアヨロ鼻灯台も霧の中だ。
霧は流れてゆき、徐々に青空が拡がってゆく。
いいなあ。駅からクルマならひと走りで、
こんなに眺めのいい宿は、そうあるものではない。
だからオレはここへ三度お世話になっている。
海に霧が流れて、そして晴れてゆく。
そんな朝の光景は、なんだかとても新鮮に感じられる。
どれ、朝飯前に、一風呂浴びるとしよう。
そういう気持ちになるのだ。
霧の朝ならば浜には灯台の霧笛が響いていたが、
GPSの発達で霧信号所は既に全廃されたという。
そしてここのアヨロ鼻灯台も2016年に廃用となった。
数々のアイヌ伝説に彩られたアヨロ海岸は、
ただ海が在るだけだから、旅行者は皆登別温泉を目指す。
登別駅に隣接する漁港の先の高台に宿はあるが、
だから此処は穴場なのだ。たまたま偶然であろうが、
天候に恵まれたせいか、オレにとってのアヨロ海岸は、
光溢れる穏やかな別天地に見えた。